Jotaro’s TGO Challenge 2019 : Part 4 – Day3-5
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ジョータローの TGO チャレンジ 2019 : Part 4-3〜5日目
ジョータローの TGO チャレンジ 2019 : Part 3−スタート〜2日目からの続き
5月12日:Day 3
三日目の朝、前日から体調を崩していたジェイソンに様子をうかがうと、依然として状況は芳しく無く、相当の熱があり、痰、咳、鼻水という風邪の諸症状が顕著に現れている。
「自分は、この状態ではTGOを継続するのは不可能だからリタイアする。俺の事は気にせずお前はTGOを続けてくれ。」
「わかった、この先2時間ほど歩くと『キングスハウス』というホテルがあるから、そこまでいけば電話も繋がるし、ヒッチハイクもできると思う。くれぐれも、気をつけて。」
こうして、ジェイソンは大変残念ながらリタイアすることになった。このことは、自分的にも結構ショッキングな出来事であり、この先は一人旅となる。一人旅は慣れているので問題ないが、共に歩こうとした相棒がリタイアせざるを得ない状況に陥ったことが残念でならない。また、ジェイソンはこのスコットランド縦走トリップをとても楽しみしていただけに、リタイヤを余儀なくされた彼の無念さを思うと、彼の分までしっかり歩き通そうと心に誓った。
コンディションを崩したジェイソンを残して3日目をスタート
エティーブ渓谷を後にする
後ろ髪を引かれる思いでジェイソンをキャンプ2に残し、一人3日目をスタートさせた。今日もここがスコットランドだとは思えないくらい天気がよく快晴だ。
元のプランでは早朝からキャンプ2の背後に聳える山に登頂する予定だったが、時間的にも気分的にもパスせざるを得ない状況だった。
グレンエティーブ渓谷を後にして、幹線道路が交わるところまで降りてきた。このあたりはグレンコーと呼ばれており、スコットランドの中でも最も印象的な風景が有名な箇所であり、観光の要衝である。
とはいっても、日本のように道の駅やコンビニのようなライフラインの充実した施設があるわけでもなく、まったくフレンドリーではない従業員がいる少々スノッブなホテルが一軒ぽつんと立っているだけだ。日本では、いかに辺境の地であろうがコンビニがあったりして、利便性が高い国かということを思い知らされる。とにかく、「何も無い」のだ。あるのは、すばらしい景色だけだ。
Stob Dearg
ジェイソンより一足先に「キングスハウス」にたどり着いた。ここでは、TGO事務局へ最初の電話連絡を入れる予定になっている。しかし、ホテルのロビーにもレストランにも公衆電話のようなものは見当たらず、ホテルの外でかろうじてつながる微弱な携帯の電波でなんとか連絡できた。そして自分の無事とパートナーのジェイソンが風邪によりリタイヤしたことを伝えた。スコットランドでは余程の町でないと携帯はほぼ繋がらないと思っておいた方が良い。この辺りも、日本の携帯のインフラの素晴らしさを実感する部分だ。
このフォンコールは、TGOでは非常に重要で、これにより事務局は各参加者の安否とスケジュールの進捗状況を把握する。最低でも4−5日おきに4回は連絡を入れないといけない。予定通り電話連絡を入れないと後で事務局サイドから酷く怒られるらしいw
キングスハウス・ホテル
ホテルのテラスでビールを一杯
ホテルのバーでハーフパイントのビールを飲み、トレイルに戻る。とにかく、ハイランドらしい風景が素晴らしく圧倒される。
「キングスハウス」を後にして、ラノック方面に向かう。トレイルはいわゆるランドローバーロードで歩きやすい。予定では、ここから見るとフォトジェニックな円錐形をした山「Stob Dearg」に登る予定だったのを取りやめにしたので、その分距離を稼ぐことにした。
進行方向には「ラノック・ムーア」の広大な荒野が広がっている。連日の好天は非常にウェルカムなのだが、日差しが刺すようにジリジリと熱い。この連日の晴天は全く予想していなかった。先に事務局に電話をかけた時、事務局の人も「全くスコットランドらしく無い良い天気続きで、驚いているわw。でも、この後、天気が崩れる事もあるから、油断しないようにね。」と言うアドバイスをくれた。
「ライドン湖」と「ラノック・ムーア」の荒野を右手に見ながら、トレイルを進んでいく。しばらく行くと、鉄道と小さな集落が見えてきた。ここはラノック駅だ。この駅には、ホームにカフェがある事で有名で、すかさず立ち寄った。
そこでバックパックを肩から下ろしたときに重大なミスに気がついた。トレッキングポールが無いのだ。ラノック・ムーアの荒野を歩いている時にトレッキングポールを使わなかったので、バックパックに取り付けていたのだが、何かの間違いで落ちてしまったらしい。
テントはドームなのでポールは別にあるから問題ないが、前室用のエクステンションタープの設営にはポールが必要だ。これは困ったな。ふと、カフェの中を見回してみると、木製のステッキが売られていた。「おぉ、これだ!」何種類かの内から最も適切な長さのポールを見つけて購入した。
今日は27km歩いたので、このラノック駅の近くでキャンプする。
広大な「ラノック・ムーア」の荒野
ラノック駅のホームにあるカフェ外観
ラノック駅のホームにあるカフェ内部
5月13日:Day 4
今朝も良い天気。ここまで一度の雨も降っていない。スコットランドでもこんなことがあるんだな。でも、好天は大歓迎だ。なんだか得した気分だ。
今日は朝から10kmほど舗装路を歩かねばならない。ルートはその後、「ランドローバー・ロード」となり、やがて湿地帯のオフトレイルとなる。
車が一台通れるくらいのダートのオフロードを日本でも「ジープロード」と呼んだりするが、ここはイギリスなのでイギリスを代表するオフロード車メーカーである「ランドローバー」の名を冠してそう呼ばれている。日本でもさしずめ「ランドクルーザー」ロードと呼ぶべきか?w
まず、舗装路を10kmほど行く。
いわゆる「ランドローバー・ロード」
右手に「Loch Ericht」を望む雄大な景色は素晴らしい。ここでまた「ボグス」遭遇する。今回は数キロにも及び、かなりの時間を費やすことになった。
なんとか「ボグス」を凌ぐと、目の前に大きな山塊が姿を表してきた。「ベン・アルダー」を擁する山塊だ。手前の川にかかる、錆びれた鉄製の橋を渡ると、「ベンアルダー」の「避難小屋(Bothy)」が見えたので、「ボグス」でずぶ濡れになった靴下と靴を乾かしがてら、しばし休息する。
「ボシー(Bothy)」とは、英国の特にスコットランド、イングランド北部、アイルランド北部、マン島などの遠隔の山岳地帯に見られる避難小屋のことだ。
「Loch Ericht(エリット?湖)」が見えてきた
厄介な湿地帯「ボグス」を抜けると、「ベンアルダー」の山塊と避難小屋が見えてきた
一息ついたところで、目の前の峠を一気に駆け上る。ほぼ直登だ。薄く踏み跡がついているように見えるが、ほぼオフトレイルに近い斜面を慎重にルートを選びながら登っていく。
面を一気に直登し、来た道を振り返る。
さらに登ると、抜けてきた「ボグス」エリアも眼下に。
標高を500mほど上ったところで、峠の向こう側が見えてきた。「Loch a’ Bhealaich Bheithe」の素晴らしいビューだ。
湖まで降りてみると、これまでとは全く別世界の隔絶された世界という様を呈している。四方を峠と山に囲まれた渓谷状の地形にある湖と、それを囲む山々。
なんと美しい場所なんだろう。時間はまだ早いが、どうしてもここでキャンプしたくなった。
Loch a’ Bhealaich Bheithe
早速テントを張るのに適した場所を探す。しかし、湖沿いのほとんどの場所は湿地の様になっていて、乾いた地面の場所を見つけるのが困難だ。さらに、この峠は風の谷で相当な風が吹いており、テントを出した瞬間に飛ばされそうな勢いの風が吹いている。
しばらく湖の周囲を歩き回り、一箇所だけ乾いた地面を見つけた。風はまだ強いが、ここになんとか「ジェダイ DCF-eVent」と「Djedi VX」を設営した。
この素晴らしいロケーションに、自分以外に誰もいない。恐らく周囲数キロから10数キロに人がいる気配がない。なんと言う隔絶感と孤独感だろう。
以前にも、コロラドのマイナートレイルで同じ様な気分を味わったことがあるが、ここはまた格別な気がする。
スコットランドの山々の標高はそれほど高くない。この英国で4番目に高い「ベンアルダー」でもせいぜい標高が1,148mだ。しかし、準北極気候により、森林限界がほぼ生活圏と同じなので、殆どの山がアルパインな様相を呈している。日本で言えば、いきなり2,500m以上クラスの山に来た感じだ。
だから、このエリアは標高がせいぜい800mくらいなのに、日本の北アルプスの「雲の平」や「涸沢」に来た様なアルプスの雰囲気を味わえると言う訳だ。
この、周囲からアイソレートされた「孤独」な感覚を十分に味わい、湖ぞいでチルアウトする。
右奥に「ベン・アルダー」を望む、湖沿いの絶好のロケーション
「ジェダイ DCF-eVent」の前室オプションの「Djedi VX」は、雨や風のある日に調理するのに最適だ。
この日は風があり、夜に若干の雨が降ったが、テントのエントランスを開けていてもテント内を濡らすことがなくて済んだ。さらに、ジェダイの透湿性は非常に優れているので、結露に悩まされることが少ない。(結露が全く無いわけではなく、少しは発生する。)
今夜のメニューは、パタゴニアのプロビジョンシリーズの、サーモンとムール貝、そして豆と野菜のスープだ。
本日の移動距離は28km。
Djedi DCF-eVentの前室、Djedi VX内で調理する
5月14日:Day 5
五日目の朝。テントの外を見てみると、今日も快晴だ。これで5日連続で晴れた朝を迎えている。予想を大幅に覆すようなラッキーな天気だ。とてもスコットランドの気候とは思えない。
テントの外に出てみると、ここがやはり尋常なロケーションでない事はすぐに理解できる。まだこの先7泊以上キャンプが続くのだが、おそらくここは最高のキャンプサイトの一つになるであろうことは容易に銅像できた。ここなら、もう一泊して周囲を探索したいくらい最高な場所だ。
とはいえ、限られた時間の中での移動が続くので、名残惜しいがこの場所を後にする。ここにはまたいつか必ず戻って来たいと思った。
5日目の朝も快晴!「ベン・アルダー」直下の最高のキャンプローケーションを後にする。
今日は、最初のリサプライポイントのダルウィニーを目指して歩く。
この「ベン・アルダー」はスコットランドの著名な山の中でも最も遠隔地にある。麓まで、最も近い町のダウウィニーからは約20km、最寄りの駅のコラー駅からも15km離れている。その為、ベン・アルダー登山には最低でも2日以上かかると言うことになる。だからこの山域は最も訪れる人が少ないと言う。
峠を降りながら、ベンアルダーを含む山塊を振り返る。
キャンプ4を振り返る
さらに振り返る。ベンアルダーとキャンプ4の湖を含む山塊は守られている様な神々しさがある。
峠を下ると、やがてトレイルは「ランドローバーロード」となり、エリット湖岸に沿ってダルウィニーまで続いている。
峠を下ると、ランドローバーロードと合流する。
エリット湖沿いに、ダルウィニーまでひたすら歩く。
湖沿いの美しい景色があるとは言え、単調な長いグラベルを歩くのはうんざりする。さらに、スコットランドらしからぬ快晴で日差しがジリジリとさす様に熱い。
エリット湖のダムが見えてきた。もうすぐダルウィニーだ。
そうこうしているうちに、ダルウィニーに着いた。ここはとても小さな村で、ガソリンスタンドとレストランとグロッサリーストアとホテルを兼ねた施設が1カ所あるだけだ。
早速「スナックシャック」に入って、ローカルのビールをいただく。汗をかいた後のビールは美味い。
リサプライポイントのダルウィニーに到着
TGOに協賛している「スナックシャック」で地ビールをいただく。
この「スナックシャック」は「エリット湖 B&B」と一体になっていて、TGOに協賛している。前述した様に、B&Bの庭はTGOチャレンジャーがキャンプできる様に解放されている。しかし、自分的には、この先の行程に備えてシャワーのあるB&Bの部屋をチョイスし、しっかり休息することにした。
届いているリサプライを受け取り、予め予約しておいた部屋にチェックイン。今夜は5日ぶりにシャワーとベッドで休む。
ここでは、思いがけない出会いがあった。
本日の移動距離23km。