Jotaro’s TGO Challenge 2019 : Part 7 – Day10-11
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ジョータローの TGO チャレンジ 2019 : Part 7 − 10〜11日目
5月19日:Day 10
TGOもスタートしてから早10日目。そろそろ疲労が蓄積して来る頃だが、ここブリーマーでは、ホテルの部屋のベッドで十分疲れを癒すことができた。予定よりも半日から1日早いペースでここまで辿り着いているので、半日か1日いわゆる「ゼロデイ」、何もしない日にするのも悪く無いと思った。
リサプライの食料、予備のソックス、着替え等をオーガナイズし、余分なものはゴール地点のホテルに送ることにした。今朝も雨が降っている。「やっと、スコットランドらしい空模様になってきたな!」と、昨夜もバーでそんな話が飛び交っていた。
すっかり、荷物の整理も終わり、さてノンビリと「ゼロデイ」を楽しもうと思ったのだが、妙にソワソワする。10日の間、規則正しく寝起きして歩いていたので、ホテルの部屋でのんびりすると言うのがどうも落ち着かないのだ。「早く外に出て、歩き始めたい」そんな衝動が強くなった。
結局、さっさとパッキングして出発することにした。こうして10日目が始まった。
村を出て4kmほど舗装路のローカルな道路を行く。そこから、カラター・バーン(川)沿いのランドローバーロードに入る。
楽しかったブリーマーでの滞在を後にする。
ブリーマーから暫くローカルな舗装路を行く。
カラター・バーン沿いのランドローバーロードに入る
カラター湖ロッジ&ボシィー
バーンとは?
スコットランドの地図をみると川の名称に「Burn(バーン)」という名称が使われていることに気がつく。これは、スコットランドとイングランド(特に東北イングランド)と、アルスター、オーストラリア、ニュージーランドの一部で使用されているローカルな言い回しだ。比較的大きめの小川や渓流、小さな河川に適用されている。
ランドローバーロードを標高を上げながら5kmほど行くと、カラター湖ロッジに辿り着いた。このカラター湖ロッジは「ボシィー(避難小屋)」も兼ねていて、Bothy Code(ボシィー・コード)と呼ばれる規則を守れば誰でも利用可能である。
小屋の前にはすでに他のTGOチャレンジャーのものとみられるバックパックが置いてある。挨拶がてら、中を覗くとTGO参加者のためにコーヒーと紅茶、そしてサンドイッチ等が振る舞われていた。昨夜、バーで出会い面識のある人たちもいたので、コーヒーを飲みながら、しばし寛ぐ。
雨は降ったり止んだりで、典型的な目まぐるしく変化するスコットランドの空模様となっている。ここからは予定ではロッホナガーの方に登ることになっていた。しかし、そちらの山域をみると真っ黒な雲がかかり頂上付近は雲に覆われて見えない。一方、湖側のルートの先には青空が見えた。一瞬の判断で、湖沿いのルートを行くことに決めた。
カラター湖ボシィー(避難小屋)では飲み物が供されていた
カラター湖沿いのルートは晴れている
この判断が正しかったかは比較しようがないが、このルートは結構タフなルートだと後に知る事になる。このルートはJack’s Roadと呼ばれており、地図上ではパスがあることになっているのだが、極めて不明瞭で踏み跡としても薄い。さらに、頻繁にボグスが出現し足元は悪い。これは前に踏んだ轍で、出来るだけ高度を上げて稜線に出た方がボグスに遭遇する率は下がるというセオリーに反した判断だった。
しかしながら、自らチョイスした選択肢を楽しまないわけにはいかない。グレン・カラター渓谷はなだらかだが、美しい渓谷だ。薄い踏み跡をなんとか辿りつつ、湿地帯をできるだけ避けつつ、歩みを進める。
やがてルートは渓谷を離れ、渓谷を形成する稜線のコルがある部分の比較的緩やかな傾斜面を直登する。ここも草付きで凹凸が激しい上湿地帯で結構な難所だ。斜面を上り切ると新たな地平が現れる。いつも、この瞬間が好きだ。
Creag Leachdach
パスは非常に薄く、踏み跡は不明瞭。またボグス(湿地帯)があちこちに点在する。
グレン・カラター渓谷沿いを行く。このように、しっかりしたトレイルのセクションもある。
草付きの足元の悪い傾斜地をほぼ直登で高度を上げていく。振り返ると、これまで歩いてきた道のりが見える。
コルを上り切り稜線に出るとトレイルは安定してきた。Crow Craigiesと呼ばれるピークを過ぎ、もう一つのピークを過ぎると分岐があり、エスク湖から流れ出るエスク川が形成する谷に降下する。
コルを登り切ると、反対側の渓谷が見えた。
ハイランドでは珍しい樹林帯
標高を下げて行くと、ハイランドでは珍しい樹林帯に入った。さらに標高を下げて、エスク川を渡る橋に出た。橋を渡ると、反対側の斜面を登り返す。
エスク川に架かる橋
反対側の斜面に取り付く
谷の反対側の斜面を登り切るとだだっ広い稜線に出た。結局、谷から稜線へ、そしてまた谷へ降りて、また稜線に登り、最後にまた谷に降りるというアップダウンの多い行程となった。最後に、ミュイック湖とキャンプ予定地のグラス・アルト・シエルの森が見えたときには、正直ホッとした。
広い稜線には、しっかりしたトレイルがついている
ミュイック湖とグラス・アルト・シエルの森が見えてきた
摺鉢状に広がる湖への長い一本道のトレイルを降下し、さらに、湖の反対側にある森にたどり着いた。
ここは、1868年にビクトリア女王によって建てられたロッジで、「Glas-allt-Shiel(グラス・アルト・シエル)」と呼ばれている。ビクトリア女王はここを「グラサルト」と呼んでいたが、夫であるアルバートが他界した際に、世を忍ぶようにここに引きこもったので、「未亡人の館」と呼ばれるようになったという逸話がある。このロッジは、「カテゴリーB」の建物としてリストアップされており、エリザベス女王の所有の歴史的建造物であるが、建物の一部はボシィー(避難小屋)として一般に開放されている。登山家、バイオロジスト、エコロジストとして有名なアダム・ワトソンをして、「グラス・アルト・シエルは、間違いなくハイランドのロッジで最も壮観な場所の一つ」と言わしめています。
Glas-allt-Shiel(グラス・アルト・シエル)
管理の行き届いた芝生の上でテントをセットアップする。
ビクトリア王朝時代に建てられた石造りの建物の脇には管理の行き届いた芝生の広場があり、そこにはすでに数張りのテントを設営し終えた他のTGOチャレンジャー達がいた。
最終的には広場のテントは自分のを含めて5張り、その内、3張りがDCF、いわゆるダイニーマ®・コンポジット・ファブリックのテントだったことは印象深い。その中に、ダルウィニー、ブリーマーでも出会ったポールもいた。
一日中雨に濡れたこともあり、日が暮れて寒くなってきたので、ボシィー(避難小屋)を覗いて見ようということになった。すると先客がおり、中で寝るという。内部は結構広く、2層になっており、暖炉もある。外には薪もあったので、火をつけて暖を取り、濡れた靴下やシャツを乾かした。中の一人がなんとジンを持っており、皆でジンをストレートで飲みながら、四方山話に花を咲かせた。
本日の移動距離、26km
5月20日:Day 11
11日目の朝。今のところ雨は上がっているようだが、空は鈍色だ。テキパキと身支度をして出発する。他のチャレンジャー達も前後して準備を始めている。具体的には聞かなかったが、恐らく今日の目的地はターフサイドになるであろうと予想できた。そこでは、TGOのボランティアによるレストランやバーが解説されているからだ。ターフサイドもTGOのルートの要衝となっている村だ。
湖沿いに、3kmほど行くと石造りのボートハウスがあった。これもビクトリア女王の時代に作られたものらしく、19世紀の当時に女王をはじめとする貴族達がここで船遊びをしている様子が、まるで映画の一シーンのように想像できた。
ミュイック湖沿いにある、古いボートハウス跡
渓谷沿いのトレイルを上がって行く
湖を離れ、小渓流が流れる渓谷沿いのトレイルに入った。ここから暫くは、踏み跡のあるシッカリしたトレイルなので歩きやすい。
渓流の源頭部まで登ると、広大な荒野が待ち受けていた。嫌な予感がしたが、それは的中した。広大なボグスだ。ここから数キロに渡りこの湿地帯を突破しなければならない。前述したように、地図上で波線が消えて途絶えているところは、ほぼ間違いなくボグスだと思って良いだろう。
この見渡す限りの平原というか荒野でのルートファインディングは至難の技だ。どこを通ればボグスを避けて最も効率よくお目当てのウェイポイントに到達できるかは、もはや野生の感というか、ラッキーを見方につけるしかない。
小渓谷の源頭近く
広大な荒野、ボグス
ここは、今回のTGOで経験した中でも屈指のボグスだ。TGOも終盤に入りボグスにはかなり慣れたと思っていたが、これはかなりキツイ洗礼だ。
なんとかボグスを凌いで、設定したウエイポイント目指して斜面を登り始める。ふと振り返ると、遥か後ろに3名ほどの人影が見えた。自分よりも先にスタートしていた他のチャレンジャーをどこかで追い越したらしい。ということは、自分の取ったルートはかなり正解だったようだ。
派手なグリーンが目を引く藻類が蔓延る湿地帯。
非常に足元が悪い場所が連続する
ウェイポイント目指して、斜面を直登する。ここでもルートファインディング能力が問われる。一面に背の低いハイマツのような植物が生えていて、歩きづらい。ハイマツの背は低いが、藪漕ぎをしているようだ。
暫く行くと、斜面の上の方に、お目当ての上いポイントの石造りの塔が見えてきた。「スロウズ・ハウス」と呼ばれるこの石の塔がある「マックル・ケアン」という山の頂にたどり着いた。斜面の下からは、後の3人も登ってきている。
3人が登り切るのを待って、反対側の斜面を降り始めた。ここから先は、しっかりした踏み跡がついており、途中からはジープロードになって、快適に歩ける。こうして、複数人数で歩くのは今回は初めての体験だ。一人はダルウィニー、ブリーマー、そして昨夜グラス・アルト・シェルでも一緒だったポールだ。今回のTGOの話や、これまでの体験談、その他諸々、歩きながらの話は尽きなかった。
斜面から振り返ると、通り過ぎてきた荒野が眼下に広がる
斜面の上に、ウエイポイントに設定した、「スロウズ・ハウス」と呼ばれる石積みの構造物が見えてきた
通り過ぎてきたボグスの悪夢から考えると、しっかりとしたトレイルやランドローバーロードはまるでハイウエイのようで天国だ。「マックル・ケアン」を下り、リー湖に沿ってトレイルは進む、やがて人里が現れ、ケアンゴームス国立公園ともお別れである。さすがに疲労はあるが、残り16kmに及ぶ行程も、歩く道さえしっかりしていれば、楽勝と思えるようになっていた。
ランドローバーロードはまるでハイウエイのよう
ターフサイドまで後わずか
そうこうして居るうちに、今日のキャンプ地の「ターフサイド」にたどり着いた。ここは小さな村だが、TGOのルートの要衝ともいえる場所だ。TGOも終盤を迎え村では教会でボランティアが宿泊地と食事を提供し、集会所ではBBQとバーが設置されている。
早速、広場にテントを設営し寝床を確保してから、食事を取り、BBQをいただき、バーに繰り出した。
バーでは、ハイランドパークとジュラがワンショット2ポンドという破格で提供されており、他のチャレンジャーとともに大いに楽しませていただいた。
本日の移動距離、28km
「ケアンゴームズ国立公園」の西の外れ、ターフサイド村のキャンプグラウンド
村の集会所がTGOチャレンジャーのためのバーに